作業療法の「作業」とは、食べたり入浴したり散歩したり、人の日常生活に関わる全ての諸活動を指します。セルフケア・家事・仕事・余暇・地域活動など、個人と社会とをつなぐ接点が作業です。
当院での作業療法は、病気やけがなどにより生活に不自由を生じている方の悩み・要望を把握し、現在の心身機能を評価することから関わりはじめます。患者さま・入所者さまのそれまでのくらしにあった活動や作業を通して、機能回復や残存能力の向上を図りながら短期・長期的な目標を達成できるようリハビリをしていきます。
身の回りの動作やもの作り・遊びなどの作業活動は、五感を刺激し、手足の運動を促し、考えるきっかけとなり、コミュニケーションを生みます。出来なかったことができるようになる、楽しみの活動ができる、という体験は、自信につながっていきます。安心できる・元気になれる場所の存在や、患者さま・入所者さま同士の交流、そのままの自分を受け入れてくれる人が作業場面にはあります。そういった中で生きがいや楽しみを見つけ、主体性を持った生活ができるように、QOL(生活の質)が向上するために、作業療法士はお手伝いをいたします。
作業療法で使用する道具は、医療用のものもありますが、家庭にもあるようなものを使う事も多いです。患者さま・入所者さまの機能に合わせて、いつ・どのような道具を使うかはプログラムに応じて選んでいます。
現在作業療法室で使用している道具の中には、作業療法のリハビリ場面で患者さま・入所者さまが作成されたものも多くあります。これは当院に入院・入所されている方々に必要な機能を備えたオリジナルです。こういった意味でも、作業療法室での作業を通じて人と人とがつながっているのだと思っています。
自助具や機器、お箸やスプーンを使って食事動作の練習をしたり、ブラシやタオルを持って整容動作にチャレンジしたり、実際の日常生活の中で出来ることが増えるように、少し先の生活を具体的に考えながら、動作方法を一緒に考えていきましょう。
季節や行事に合わせた装飾物を創作したり、書道や塗り絵・ちぎり絵や手工芸・囲碁将棋・麻雀などの趣味活動に取り組まれる患者さま・入所者さまは多いです。作業をすることには機能訓練の側面もあり、「訓練」と意識しなくても治療効果を臨めるところがこの活動の特徴です。難しいところは、環境設定をしたり作業療法士がサポートしたりして、楽しんで活動を進めていただけるよう配慮をいたします。
出来上がった作品は作業療法室の中に展示しています。